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ポチカルゴン
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タイトル 日 時
26ページ
 男の正体が判明した今、ポルゴは今後の旅が心強くすら感じられた。性格や態度をとればとても高尚な僧であるとはいいがたい。しかしその本体がかのスービとくればまた話は別である。昔ローイに、あんたのその運の良さだけはあたしも見習わなくちゃいけないといわれた時の言葉が浮かんだ。ポルゴの運は筋金入りだった。たとえば本人が期待するイベントのある日はいつも天気は晴れていた。運動会、遠足、旅行、お祭り……。反対になんの興味もない日は必ず雨や雪、思いが強ければ時としてヒョウも降った。そんなわけで、ポルゴ自身はこの、... ...続きを見る

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2008/02/20 10:05
25ページ
 木から木へとポルゴは猿のように渡った。僧は身体を怪我していたこともあってか、ゆっくりゆっくりとポルゴの後の続いた。少し行っては後ろを振り返り、ポルゴは僧の進行状況を毎度確認しながら木の幹から幹へと飛び移った。しばらくそのまま上っていくと、葉のないやせ細った木々の枝の間から、広大なミダカの町が映し出された。マッチが点在していて、色とりどりの建物の屋根が淡いトーンで眼下に浮遊していた。田畑は赤い灰色でそこらじゅうにちりばめられていて、暗い地上を造りだし、マッチをやはり町のアクセントにしていた。 ... ...続きを見る

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2008/02/12 09:35
24ページ
 ヨービたちは天道のいたるところを捜した。また、結界を張り、ほんの少しの気の乱れも感じ逃さないように注意した。  木が生えていなかったらこの山を登るのはロッククライミングの様相を呈していたであろう。火玉山はある程度まで緩やかな傾斜を上った後、およそ垂直にも似た急勾配になる。そして頂上までようやく到達すると、あとはハンヌーへ向かって延々つぃた緩やかな山の斜面に戻る。こうしたいびつな形がミダカの昼を短くする原因なのだ。常に外敵を寄せ付けない天道とはいえども山の頂上への過程は、その険しさゆえ道なき道... ...続きを見る

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2008/02/10 11:50
23ページ
 ミダカの町はマッチの強い光に照らされて、ようやく太陽のない朝をむかえた。東にそびえる火玉山の輪郭に太陽の光である黄色い線が浮かび上がった。まるで、山全体が燃え盛っているようだった。  風天の館には依然としてただならぬ緊張感を辺りにまいていた。四人がかりの僧の結界では心もとなく、八人の僧がかわるがわるで見張っていた。 「突如に風天様の気が乱れた。我々が見張っていたから惨事は免れたが、何かに触れ、恐ろしいことが起きる兆候が感じられた」 「ドービ一等僧、我々ヨ−ビらにお任せください。お身体によ... ...続きを見る

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2008/02/08 09:52
22ページ
 一度の食事でポルゴの持ってきたおにぎりはなくなった。僧は次第に回復してきているようで、それとともに口数が増えていった。顔は浅黒く、無精ヒゲが顎の輪郭をも消しつつあったが、整った顔だった。どこか目元が物憂げに思えたが、刻み込まれた笑い皺を見る限り、暖かな人間模様が浮かび上がってきた。ポルゴにはこれが昨夜と同じ人間だとは思えなかった。互いの生い立ち、ポルゴの姉との別れ、火玉寺への冒険を話した。しかしひとたび僧が旅をする理由の話を迎えるとその真剣な顔は昨夜の荒々しい僧を思い浮かべさせた。まるでミダカ... ...続きを見る

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2008/02/06 09:49
21ページ
 人が人に生まれてきたことには必ず意味がある。サルやブタと違って人間は考えて行動する。頭を働かせて食を満たす。そして考えて自分の身を守る。だから自らが自らを危険な目に合わせるようなことは人として愚かなことだ。とローイはよく口にしていた。そしてお前にはその認識がまだまだ足りない。だからこうして私が見張っててやるんだよ。とポルゴは言われてきた。姉の言うことは常に正論だった。ポルゴが水をこぼしたとき、つまづいて転んだとき、風邪をひいて寝込んだとき。ローイはまるで初めからそうなることを知っていたかのよう... ...続きを見る

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2008/02/04 16:41
20ページ
 僧は確かな水の技の使い手であった。ポルゴは僧の技に圧倒され、驚嘆しつつも、いままでがむしゃらに走って追っていた背中が頼ることのできない偽者ではなかったという安堵感に浸った。今日起きているすべての事柄が嘘のことのようで、夢であるかのような錯覚はそのつど抱いてはいたが、そろそろ現実と向き合わなければならないと自覚した。それと共に、自分がいかに無謀なことをしているのかという絶対的な不安がおしよせてきた。  ファイ虫の棲家はそれからおよそ数キロの辺りにあった。大地が熱を帯びていて、眩い光が灼熱の炎を... ...続きを見る

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2008/02/01 10:52
19ページ
 新たな恐怖と不安を生み出したポルゴの心境は複雑だった。話していると、あがっていた吐息が少しずつ収まってきた。ポルゴは起き上がると、さらに僧に尋ねた。 「それじゃあとりあえずミダカは安全なんだな。だけど、本当に俺たちは火玉山に入るためにファイ虫の巣を通り抜けるなんてことができるのか? 俺は、ただ一匹のファイ虫相手に必死に僧が空気で縛り付けているのを見たことがあるぞ。あんな生き物が何匹もいたらきっと俺たちは黒こげにされてしまうだろ?」  僧はじっと考えているようだった。  鬱蒼としたこの森は... ...続きを見る

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2008/01/31 09:25
18ページ
 僧はポルゴを地面に降ろすと、ポルゴに言った。 「走れるな」  先ほどの怪しいうめき声はまだ聞こえていた。声とともに、建物全体がまるで触れてはいけないなにものかに触れてしまったかのように緊張していた。ポルゴは僧を追って森の中の道なき道を一目散に走り続けた。ただ追いかけているというよりは、恐怖で逃げている感覚だった。それはおそらく前を走る僧も同じだろうと思えた。  どれだけ走り続けたのだろうか、息も絶え絶えになったポルゴは僧に言った。 「いったいどこまで逃げるつもりだ? もう俺は疲れて走れ... ...続きを見る

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2008/01/30 18:34
17ページ
 屋根を伝って行くと、中庭のような空間が現れた。その中庭というやつは正方形をしており、そのまた中央におよそ四畳半程と思われる建物があった。建物は完全に他の寺院とは隔離されていて、正面にドアが一つあるだけであった。 「ここに風天様はいる」  僧はさらに声をひそめて言った。ポルゴはさっきの根拠のない自信がうそであることに気づいた。今まで感じたことのないような緊張感に包まれ、じっとしているにもかかわらず、息苦しくなってきた。身動きをとることができなかった。 「あの建物の発する異様なほどに感じるこ... ...続きを見る

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2007/10/20 18:53
16ページ
 屋根に上ったポルゴに僧が切りだした。 「ちゃんと買ってきたか?」 「ああ、買ってきたさ。それっ」  タバコは宙を舞い、僧の手元へと渡った。ポルゴは、闇に包まれていてもまるで何もかもが見透かされてているように感じた。  僧は時計らしきものを見た。そして、念入りにタバコを確認していた。 「約束どおりここを通してもらおうか?」 「……わかった」  僧はタバコに火をつけた。その瞬間、ようやく僧の顔が映し出された。無精ヒゲを生やしていて、顔はやつれているかのように痩せていた。黒ずくめの格好... ...続きを見る

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2007/10/19 23:07
15ページ
 点々と点された街灯が、走るポルゴの影を大きくまた小さくする。  とある店先に、先端の光っているものが見えた。近寄ると、ゴルフのクラブのようであるらしかった。軽く、強度もありそうで、ポルゴは武器になりそうだということを直感した。ポルゴの身長にはすこし長いような感じではあったが、リュックと背中の間に挟みこむと、うまい具合に引っ掛かって、安定するような気がした。なにより、光っていた先端に「P」と名前の頭文字が書いてあったのがポルゴにとってはなんだか特別に感じて嬉しかった。  息を切らしながらもな... ...続きを見る

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2007/10/14 12:51
14ページ
 返答に困ったポルゴは、この影の正体が知りたくなった。火玉寺の僧侶ともあろうものがうまい話を自分に持ちかけるなどということがあるのだろうか? 「お前は一体何者なんだ。とても火玉寺の僧とは思えない対応だな。それに、タバコを買ってこいとは……。どうかしているんじゃあないのか?」 「何者なんだとはこっちのセリフだ」  影は少し語気を強めた。 「タバコを買ってきたらここを通してやると言っているんだ。俺を詮索しようとはいい度胸だ。だがなチビ、あんまり俺を怒らすなよ。俺にもここでお前と戯れている時間... ...続きを見る

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2007/10/08 11:41
13ページ
「悪いけどここは通してもらわないと困る」  ポルゴはリュックからそっと折りたたみ傘を取り出した。いざという時には戦うための武器になるし。最悪、トンを抱えたままパラシュートのようにして地上へ安全に落ちて逃げることができるかもしれないからだ。 「言っているだろ? 俺の仕事はお前をつかまえることだって」  影は次第に人型を現してきた。こっちに近づいてきている。 「動くな」  一瞬、「来るな」と言うのでは弱いと思って思わず出た言葉だった。  しかしポルゴの声に影は止まってくれた。 「話があ... ...続きを見る

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2007/10/06 19:35
12ページ
 屋根の上でトンの首輪にタオルを巻きつけ、ポルゴは履いていた靴と靴下をリュックに詰め込んだ。トンは足が震えていて、とても悲哀に満ちた顔でポルゴの方をみている。 「臆病だな。さっき俺を助けくれた時のお前はかっこよかったぞ」  瓦屋根の傾斜はゆるやかになっていて、建物の大きさを感じさせた。風がふわりと彼らを包んだ。町はまだ暗く、マッチの明かりもない。夜空の星と、わずかの街灯できらめいていた。ポルゴは、どうしたわけかずっとこうやってミダカの町を俯瞰していたいような不思議な思いを抱いた。  屋根の... ...続きを見る

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2007/10/02 22:19
11ページ
「なんだ、犬か」  僧の声が聞こえた瞬間、ぽるごは自分がとうとう見つかってしまったと思った。しかし……  トンだ。トンがうまい具合にやってきたのだった。しかしポルゴの身体は未だに硬直したままだ。 「明かりを消せ。風天様に見つかったら大変だぞ」  その一声で、明かりは一斉に消えた。ここしかないというタイミングでポルゴは息を止め、建物の外側へと舞い戻った。トンは足元で尻尾を振っている。あわててポルゴはさらに茂みの中へと飛び込み、隠れこんだ。まるで本当の犬のように。いつ僧が出てくるともかぎらな... ...続きを見る

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2007/10/01 19:57
10ページ
 火玉寺の扉は以前として開かれている。ポルゴは、口の前に指を一本立てトンに待ての合図をし、そのまま扉の中を覗くべく、ゆっくりとした足取りで歩きだした。僧侶に見つかるようなことがあったら、即座に捕まえられて家に送り返され、今後はローイからよりいっそう厳しく監視される。まして二度と両親を探しにいくなどということはできなくなってしまうだろう。ポルゴの心は不安でいっぱいになり、心臓の音が自分の耳で聞こえてくるほどの緊張感が包んだ。  建物の中からは何も物音は聞こえてこない。また、人の気配も感じられなか... ...続きを見る

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2007/09/30 13:46
9ページ
「けれど、かつて互いに助け合い、手を取り合って仲良くしていたハンヌー町とは高く大きくそびえ、立ちはだかる火玉山によって裂けられてしまった。互いの町を行き来するには馬車で三日。大人が丸一週間日くらいかけて歩いてようやく着くことができる程の距離よ。それに道は起伏が激しく、体力のいるものだから、年寄りや子供はあまり入ることができないの。だから、天道を通らずに火玉山へ入っていった人間が何人もいたけど、道に迷って帰ってこれない人や、未だに熱をもち、凄まじい炎が篭る地面から時として出没するファイ虫っていう恐... ...続きを見る

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2007/09/29 13:40
8ページ
 静寂の中、ポルゴは以前にローイから聞いた火玉山の話を思い出した。 「ポルゴ、わかった? だから絶対に私か他の大人と一緒でないときはあの山に入ってはいけないよ」 「でも、どうして天道じゃない道から山に入って行った人は帰ってこれないの?」 「それはね、ポルゴ、もともと火玉山なんてものはなかったらしいの。お父さんやお母さんから聞いた話なんだけど。あの山は今では高々とそびえるイメージしかないんだけど、昔はそれは小さく、名前もつかないような山だったらしくて……。それがある日突然隆起して、原因はわか... ...続きを見る

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2007/09/28 22:02
7ページ
「ドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーー」  いきなり激しい音が辺りを包んだかと思うと、扉から何十人という数の僧が駆け出していた。黒子のような格好をして、凄まじい音と速さで彼らは門を抜け、ついさっきまでポルゴとトンがやってきた道を走っていった。一瞬のできごとである。ポルゴは目を見開いて今起きている状況を飲み込もうとしていたが、動揺している自分の心を静めることに精一杯でうまくいかなかった。トンも興奮しているようで、尻尾をピンと立て、全身に緊張を走らせていた。 「いったい何なんだろう」 ... ...続きを見る

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2007/09/24 14:13

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